親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
新しいことを学びたい、挑戦したい。でも、「時間がない」「何から始めていいかわからない」……そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは、多いのではないでしょうか。
新しいことを始めるには時間だけでなく、気力、体力も必要です。毎日の仕事だけでも大変ですから、行動に移すのが難しいもの。そんな日々の生活の中でも、一歩を踏み出す方法を知りたいですよね。
今回は、『まずは小さくはじめてみる ~変わらない日常から抜け出す0→1実践ガイド~』(すばる舎)の著者で、企業コンサルタントや企画プロデューサーなど様々な顔を持つ大木浩士さんに、挑戦したいことに向けて歩みを進める方法について、教えていただきました。
はじめの一歩は「5分でできること」を目標に設定する
社会人は、仕事に家事に忙しいものです。挑戦したいことがあってもなかなかできなくて、「結局今日もできなかった」と落ち込んでいる人も少なくないでしょう。
新しいことを始める際に、私が最初の一歩としておすすめしているのは、「できて当たり前の小さな目標を立てる」ことです。これは、5分でできることで大丈夫。
例えば、ダイエットなら「腹筋を1回する」、英語の習得であれば「テキストを1ページ眺める」だけで構いません。目標を立てる際には、考えずに動けるくらい小さな作業レベルまで落とし込むのがコツです。
何かを始める際、みなさんは意外と大きな一歩を踏み出そうとしがちです。しかし、大きな一歩には時間も労力もお金もかかります。でも、今は時間もないし、疲れているから「今度にしよう」「お金が貯まってから」と先延ばしにしてしまう。だからこそ、最初の一歩は「今、5分でできること」がいいのです。今すぐ、頑張らなくてもできることを目標に設定してください。

私は、「本を書きたい」と思っていた頃、頭の中に溜まっていた考えを外に出したくて、まずはノートを買いに行きました。この思いも熱量も、もしかしたら一晩寝たら消えてしまっていたかもしれません。でも、すぐノートを買いに行くことができたから、今があると思っています。
継続するために、記録やSNSを活用して
最初の一歩を踏み出したら、ぜひ記録をつけてください。腹筋を1回したなら、カレンダーや手帳に「1回」と記録をつける。毎日記録をつけると、何もできていない日を気持ち悪く感じるようになり、自然と継続につながります。そして、毎日の計画はスケジュールに入れたりアラームを設定したりして、「いつ、何をするか」を具体化しておくと行動しやすくなります。
また、人に話したりSNSで発信したりするのもおすすめです。例えば、「将来、本を出したいと思っています」とは、壮大な夢物語と思われそうで言いづらいかもしれません。でも、「将来本を出したいので、試しにブログを書いてみました」であれば、書いたことは事実ですから言えるはず。
このように、夢や実現したいことに向かって小さく動いたことを、発信すると周りの見る目も変わってくるはずです。人は、他人の行動に敏感に反応する傾向があるので、実際に行動したことを伝えると反応してくれます。
試作品を撮影してSNSにアップしたり、「最初の一歩としてこれを始めました」と報告したりしたら、きっと誰かが「いいね」と言ってくれますし、自信や勇気につながります。

もし、こうした方法でも「重たい腰が上がらない」「ついだらだらしてしまう」という場合は、好きなこと、楽しいことと抱き合わせにして取り組むことをおすすめします。例えば、「英語のテキストを解いたらお酒が飲める」「運動をしながら動画を見てもいい」といった具合です。そのようにして「取り組み=楽しみの時間」に変えてしまいましょう。
私は早起きが苦手ですが、「朝起きたら大好きなコーヒーと苺ヨーグルトを食べられる」と思って、早起きを頑張っています。このように具体的に「これをすれば楽しい時間が訪れる」ということを思い描けると、ポジティブな気持ちで取り組めるのではないかと思います。
仕事でプロジェクトを立ち上げたいなら、まずは雑談から
仕事で新しいプロジェクトを立ち上げるなど、少し大きなことに取り組む場合、まずすべきは企画書を書くことです。1枚でいいので企画書を書きましょう。
しかし、企画書を書くには結構な労力がかかります。ですから、まずはその企画に関心を持ってくれそうな人を1〜2人捕まえて、雑談をすることから始めてください。「今、こういうことを考えていて」と思いつくままに話したり、それについての意見をもらったりすると、頭の中が活性化してやる気が出てくるはずです。話すことで考えを言語化することもできますし、他の人の意見や情報をもらうことでアイデアも蓄積され、企画書の材料も溜まります。その後、本当に1枚でいいので企画書を作ってみる。それが、プロジェクト立ち上げの一歩になります。
雑談の際、できれば自分と考え方の違うタイプの人を入れることをおすすめします。「発想が豊かで言語化力も優れているけれど、盛り上がるだけになってしまうタイプ」や「論理的に考えるのは得意だけれど、眉間に皺を寄せて難しい話ばかりしてしまうタイプ」など、自分を含め、人には得手不得手があります。タイプの違う人たちに思いをぶつけてみることで、いい具合に話が進むはずです。
「おバカな自分」になりきって、仲間を増やす
新規プロジェクトなどの大きな夢ほど、行動に移そうと思っても、「失敗したらどうしよう」とブレーキをかけてしまう人もいるでしょう。そんな時に、一歩踏み出す勇気を持つ方法をお伝えします。
まず1つ目は、仲間を作ることです。したいことが一人でできることならいいのですが、一人だと気持ちが沈んだり、疲れると前に進めなくなったりします。そんな時に一緒に動いてくれる仲間や、応援したり勇気づけたりしてくれる賛同者がいると、とても心強いです。
そして、2つ目は「おバカになること」。「失敗すると嫌だな、恥ずかしいな」「こんな話、いきなり聞かされても困るよね」と考えてしまう気持ちもわかります。でも、そんな時は「おバカになった自分」を演じてみてください。私も、「こんな有名な人に突然連絡しちゃって、僕っておバカだなあ」と思いながらメールや手紙を出したことが何度もあります。たしかにうまくいかないと恥ずかしいのですが、「今この瞬間だけはおバカな自分だ」と思っていれば、普段よりも凹みません。

実際、おバカモードで連絡したことで、有名人や著名人に協力してもらえた経験があります。社会的な意義や、相手のメリットを考えて誠意を持って伝えれば、意外と良い返事をくれるものです。その時に大事なのは、すでに何かしらのアクションを起こしていること。何か行動した実績があると信用してもらうことができます。ですから、まず一歩を踏み出すのは大事なことなのです。
このように、何かしらの取り組みを続けていくと、私の経験上では「わらしべ長者」的な現象が起こり始めることが多いです。行動していると知り合いができたり、その人と話しているうちに新たなアイデアが生まれてきたり、それが面白いことにつながったり。レベルアップしながら螺旋状に物事が進んでいくように思います。ぜひ動いてみてください。
生み出すことの楽しさを知ってほしい
現代は、膨大な量の情報やエンタメ、商品などが簡単に手に入るので、消費するだけでも毎日が終わってしまいます。もちろんそれが悪いわけではありませんが、私は人間には、消費する力と同じくらい誰もが創造する力を持っていると考えています。その生み出す力には一人ひとり個性があり、あなたにはあなたにしか生み出せないものがきっとあります。
ブログでも企画書でもいい。それをしないのは非常にもったいないと思います。生み出したものが増えるにつれ、「こんなことができるんだ」と自分の存在意義も感じられるし、自分に対する誇りや自信が育ってきます。また、動くことで尊敬し合える仲間に出会えたりもします。
成し遂げたいことが100だとしたら、多くの人が何もしていない0の状態から、いきなり100を目指しがちです。しかし、まずは0から1にすることが大事です。それが「今すぐ5分でできること」であり、その1を2にして、2を3にしていくことで、スキルが溜まり、賛同者や仲間にも出会えるようになる。そして、いつの間にか100にたどり着くのです。まずは5分でできることから始めてください。きっと、その一歩があなたの「したいこと」の実現につながっていますから。
大木浩士
OOKIWORKS・代表/企画プロデューサー/プロジェクトアドバイザー
OOKIWORKS代表。広告代理店やコンサルティング会社を経て独立。現在は人材育成支援や組織風土改革支援、企業の課題解決に向けたプロジェクト創出支援などを行う。大学の非常勤講師、とちぎ未来大使、中小企業診断士、出羽三山の山伏などの顔も持つ。著書に『まずは小さくはじめてみる~ゼロイチ実践ガイド~』(すばる舎)『博報堂流・対話型授業のつくり方』(東洋館出版社)『プレゼン指導の基礎ガイド』(東洋館出版社)がある。
取材・執筆:神代裕子 アイキャッチ・図版:サンノ 編集:モリヤワオン(ノオト)

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